相続税申告および納付は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う」というように定められた期限内に行う必要があります。さまざまな理由により納付した金額が本来納めるべき金額よりも少なかった、逆に多かったことが発覚するケースも少なくありません。この記事では相続税申告を終えた後に申告内容の修正のために行う手続きについて簡単にご説明いたします。
納付額が少なかった場合に行う「修正申告」
相続税申告を終えた後、実際に取得した財産額が申告した財産額よりも多く、本来納めるべき相続税額よりも少なく申告したことが判明した場合に行うのが「修正申告」です。
修正申告が必要となるケース
主に以下のようなケースのとき修正申告を行う必要があります。
- 遺産分割協議で話がまとまらなかったが、相続税の申告期限に間に合わせるために、法定相続分の通りに遺産分割したものと仮定して一旦相続税の申告および納付を行った。その後遺産分割協議で話がまとまり、実際に納めるべき相続税額が申告した相続税額よりも多かった。
- 取得した相続財産に資産価値はないと判断していたが、相続税の申告をした後にその相続財産に資産価値があり、相続税の課税対象となることを知った。
- 相続税の申告をした後に新たな相続財産が見つかった。 など
上記のうち、②や③については相続税の申告前に徹底的に財産調査を行うことで回避できると考えられます。
修正申告は間違いに気づいた時点ですぐに行うべき
提出は税務調査により税務署側から指摘を受けるまでに行うべきです。なぜなら税務調査の連絡を受けた後に修正申告を行うと追加で納税すべき税額に加えて過少申告加算税が課されてしまう場合があるからです。納付額が不足していたことを税務署から指摘される前に自ら申告すれば、過少申告加算税を支払う必要はなく、延滞税の支払いのみで済み、ペナルティを軽減させることができます。延滞税は法定申告期限の翌日から完納日まで加算されますので、修正申告が必要だと判明したらいち早く行うよう注意しましょう。修正申告が必要だと判明したにもかかわらずそれを隠ぺいした場合、過少申告重加算税といってさらに高額な税金を課されてしまう可能性もあります。本来納めるべき税額よりも多額な税額を払う事がないよう、相続税申告は正しく行うよう心がけましょう。
相続税を払いすぎていた場合に行う「更正の請求」
相続税申告を終えた後に、本来納付するべき相続税額よりも多い金額を納めていた場合に行う手続きが「更正の請求」です。この手続きを行うことで、納めすぎた税金の払い戻しを受けることができます。
更正の請求が必要となるケース
主に以下のようなケースで更正の請求を行う必要があります。
- 遺産分割協議で話がまとまらなかったが、相続税の申告期限に間に合わせるために、法定相続分の通りに遺産分割したものと仮定して一旦相続税の申告および納付を行った。その後遺産分割協議で話がまとまり、実際に納めるべき相続税額が申告した相続税額よりも少なかった。
- 相続税の申告後に遺言書が見つかり、納めるべき相続税額が申告した相続税額よりも少なかった。
- 遺贈を受ける者がその権利を放棄し、財産の取得分に変化が生じた
- 相続税の申告後、遺留分侵害額請求権の行使によって財産の取得分に変化が生じた
更正の請求の有効期限
更正の請求ができる有効期限は法定申告期限から5年以内とされています。つまり、自己のために相続が開始したことを知った日の翌日から5年10か月以内であれば更正の請求を行うことができます。ただし、法律が定める後発的事由があった場合の期限はこの限りではありません。相続税申告を正しく行うためにも、更正の請求や修正申告が必要か否かについては、相続税申告の専門家に相談し判断を仰ぐほうが確実といえるでしょう。