相続発生後すぐに始めるべきこととして、亡くなった方の出生から死亡までの全戸籍謄本の収集があります。この戸籍謄本は、亡くなった方の相続人が誰であるかを判断するために必要な書類です。生前に戸籍があったすべての自治体から取得する必要があります。戸籍は引っ越しや婚姻により複数回転籍されることが一般的であり、収集には多大な時間と労力がかかります。だからこそ、相続が発生したらすぐに取りかかり始めることが重要になります。
戸籍収集に時間を要する主なケース
たいていの場合、戸籍謄本をすべて集めるためには複数の自治体から取り寄せなければなりませんが、以下の場合は全戸籍謄本の収集に時間がかかりますので注意が必要です。
ケース1:亡くなった方が本籍地の転籍を繰りかえしていた
亡くなった方が生前に幾度となく引っ越しを繰り返し、そのたびに本籍地を変えていた場合です。この場合は本籍地を管轄しているそれぞれの自治体へ戸籍謄本の請求をする必要があります。複数の自治体とやり取りを行うことになるため、多大な時間と労力がかかります。
ケース2:先に亡くなった相続人がいる
例えば、被相続人の子どもが被相続人よりも先に死亡していた場合、被相続人の孫、またはひ孫が代わりに相続人になります(代襲相続人という)。したがって、先に亡くなった方とその子どもの関係性を明らかにするには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本に加えて、先に亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があります。つまり、単純に考えれば手間も時間も倍増しているといえます。
ケース3:不動産名義が先代の名義になっている
亡くなった方が先代から相続した不動産の名義を変更しなかった場合、戸籍謄本の収集は過去にさかのぼって先代の戸籍まで行うことになります。古い戸籍の収集は難しく、現在のものとは書式が異なるため、内容が解釈できない可能性があります。
なぜ戸籍謄本の収集に時間がかかるのか
一般的に戸籍謄本の収集に時間がかかるのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を死亡から出生に順々にさかのぼって取得しなければならないためです。このため、亡くなった方が本籍地の転籍を繰り替えしていた場合、取得するべき戸籍謄本の数が多くなるので、多大な時間と労力がかかることになります。
相続人調査の終了後は「相続関係説明図」を作成する
無事に亡くなった方の戸籍謄本の収集が終わり相続人の確定が完了した時は、「相続関係説明図」を作成します。相続関係説明図とは、亡くなった方と相続人の名前や生年月日、死亡年月日、続柄などを記した家系図のような表であり、不動産の相続登記を行う時にも必要となる書類です。作成すると相続人の数や続柄がすぐに把握できるので、遺産分割協議を円滑に進めることができます。
相続関係説明図サンプル
相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い
相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違いはいくつかありますが、最も大きな違いとして証明力が挙げられます。相続関係説明図は、戸籍謄本の内容を簡単にまとめた書面にすぎないため、それだけで相続関係を証明する効力は一切ありません。ゆえに、相続関係説明図を作成しても、相続手続きの申請先にはすべての戸籍謄本を提出する必要があります。一方で、法定相続情報一覧図は、その相続関係を法務局が認証したものなので、相続手続きの申請先に戸籍謄本の提出は不要になります。ゆえに、法定相続情報一覧図をもって戸籍謄本に代えることができます。以上より、法務局が認めたものか否かが相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違いとなります。
※2017年5月から「法定相続情報証明制度」が創設されました。「法定相続情報一覧図」は戸籍一式と作成した法定相続情報一覧図を法務局に提出し、法務局が認証した書類のことを指します。